
世界の物流アーリーステージ・スタートアップ動向レポート
1. 市場の活況を示すデータ
近年、物流・サプライチェーン分野のスタートアップへの投資はパンデミック期に急拡大し、その後調整局面を迎えています。
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2021年:同領域スタートアップが世界で約 280億ドル を調達(1,554件で過去最高)
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2022年:調達額は約 129億ドル(前年比ほぼ半減)
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2023年:さらに減少、約 67億ドル(965件)
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2024年(推定):60億ドル未満(741件)、金額ベースで2015年以来の低水準
つまり、2021年のピークと比べて市場規模は70〜90%縮小。
それでも、2010年代以降に約650社の物流スタートアップが登場し、累計980億ドル以上を調達。特に2021年には多くのユニコーン企業が誕生。
地域別傾向:
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アジア太平洋地域:2021年は全世界の物流VC資金の約52%を占める
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2023年:北米が43%で最多、インドがシェアを倍増して欧州と並ぶ
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東南アジア(2024年):前年比 +21%(件数)、+83%(資金)、インドネシアが中心(取引数37.7%、金額71%)
アーリーステージ投資(シード〜シリーズA/B)は比較的堅調で、レイトステージの大型調達のみが鈍化傾向。
2. 注目される技術領域
✅ ラストマイル配送
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オンデマンド配送、デリバリープラットフォーム、自律ドローン・ロボット
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例:Zipline(米):2023年に3.3億ドル調達、評価額42億ドル
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例:XpressBees(インド):シリーズDで1.2億ドル調達
✅ 自動運転・自律走行
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自動運転トラック、ヤードトラックの無人化など
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例:Outrider(米):シリーズCで7,300万ドル、累計1.9億ドル超
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例:Gatik(米):ウォルマートと連携し無人トラック配送
✅ 倉庫の自動化・ロボティクス
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AMR(自律走行ロボット)、ロボットアーム、自動積み下ろし
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例:Locus Robotics(米):シリーズFで1.17億ドル、評価額20億ドル
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例:Geek+(中国):グローバル展開中
✅ AIによる物流最適化・ソフトウェア
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需要予測、在庫管理、ルート最適化、トラッキングなど
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例:Altana AI(米):2024年に2億ドル調達、評価額10億ドル
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例:Project44、FourKites、Flexport:いずれも急成長SaaS企業
✅ サステナビリティ対応
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EV配送、再利用型梱包、CO2削減SaaSなど
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サステナブル物流関連投資:2022年に前年比+12%、全体の36%を占める
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例:Einride(スウェーデン):電動自動運転トラック
3. 有望なアーリーステージのスタートアップ事例
🚁 Zipline(米)
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ドローンによる医療物資・宅配
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2023年に3.3億ドル調達(評価額42億ドル)
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累計8億ドル以上、Sequoia, a16z, GVなどが出資
🚚 XpressBees(インド)
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EC向け配送、インド国内に強み
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シリーズFで3億ドル(評価額12億ドル)
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累計5.75億ドル以上、Blackstone, TPGなど
🌍 Flexport(米)
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クラウド型フォワーダー、国際物流デジタル化
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シリーズEで9.35億ドル(評価額80億ドル)
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Shopifyと連携、累計調達20億ドル近く
🔍 Altana AI(米)
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サプライチェーンのリスク可視化AI
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シリーズCで2億ドル、評価額10億ドル(2024年)
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米政府系ファンドが出資
🛻 Outrider(米)
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自動運転ヤードトラック
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累計1.9億ドル、Walmartなどが導入検証
🌐 Forto(独)
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デジタルフォワーディング、欧州中心
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累計調達6億ドル超、評価額21億ドル
4. 地域別の傾向
🇺🇸 北米
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最大の資金供給地域(2023年は43%)
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自動運転、ロボティクス、AI系が中心
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Gatik、Nuro、Outrider、Altana AIなど多数
🇪🇺 欧州
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サステナビリティ志向が強い
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Forto、Einride、Exotec、Pledgeなど
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地政学リスク対策や法令対応に強み
🌏 アジア(中国・インド・東南アジア)
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急成長市場、人口スケールが強み
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XpressBees、Ninja Van、Cainiao、Lalamoveなど
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インド:政府支援で投資拡大中
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東南アジア:インドネシア中心に回復傾向
🌍 中南米・アフリカ
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Nowports(メキシコ)、Sendy(ケニア)、Zipline(ルワンダ)など
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インフラ未整備な分だけスタートアップにチャンス
5. 投資家・大手企業の関与
💰 VCの動き
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SoftBank Vision Fund:Nuro、Delhiveryなどに巨額投資
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Sequoia、Andreessen Horowitz、GV:Flexport、Zipline等
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特化型VC:Dynamo Ventures、8VC などが登場
🏢 CVC・戦略提携
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UPS:TuSimpleに出資、Roadieを買収
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FedEx:Auroraと提携、自動運転トラック実証
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Maersk:Maersk Growth設立、Fortoなどに出資
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Amazon:Amazon Industrial Innovation Fund(2022年設立)
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Agility Robotics、BionicHIVE 等に投資
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Kiva Systemsの買収も先行例
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Shopify:Flexportに2.6億ドル出資、共同物流戦略
大手企業の「実証環境」や「顧客基盤」を活用したオープンイノベーションが進行中。買収や業務提携によるスタートアップ吸収も拡大傾向。