
業界課題とDXの必要性
建設業界は慢性的な人手不足と職人高齢化に悩まされるとともに、他産業に比べIT化が遅れ生産性が低いと指摘されてきました。施工管理や図面管理が紙・FAX中心で非効率、現場と本部間の情報共有不足による手戻りなどが典型的な課題です。こうした状況を打破するため、国土交通省は「i-Construction」やBIM/CIM(3次元施工情報)の活用を推進し、2023年にはインフラDX加速の年と位置づけて取り組みを強化しています。この環境下で、スタートアップが現場管理SaaSやドローン計測などのDXソリューションを提供し、建設業の変革が進んでいます。
注目スタートアップと取り組み
建設現場向けクラウドサービスアンドパッド(ANDPAD)は、施工管理から図面共有、検査記録までを一元化するプラットフォームを提供しており、直感的な使い勝手の良さから業界シェアNo.1に成長しています。ANDPAD導入により、現場監督・職人・元請会社間でリアルタイムに情報共有が可能となり、ミスや手戻り削減に寄与しています。2022年時点で14.5万社・38.6万人超の建築関係者が利用し、生産性向上に貢献しています。また、現場写真や図面をクラウド管理するPhotoructionや、建築資材の発注・見積を効率化するTerraskyなども注目企業です。施工図の確認にAR技術を用いるスマート施工系スタートアップや、重機の遠隔操作・自動化を手掛けるロボットベンチャーも台頭しています。例えばドローン測量・点検を行うテラドローン(Terra Drone)は世界展開するスタートアップで、2023年にサウジアラムコ系VCから18.5億円を調達し累計126.6億円の大型資金調達を達成しました。ドローンやロボットを活用した施工省力化サービスも、インフラ点検や造成工事の現場で実証が進んでいます。
資金調達・協業動向
建設テック分野では近年、大型の資金調達が相次いでいます。前述のアンドパッドは2022年に海外投資家中心のシリーズDラウンドで約122億円を調達し、累計資金調達額は約209億円に達しました。また2024年には子会社化のため銀行融資12億円を含む追加調達も実施しており、資本力を背景にサービス拡充を図っています。他方、スタートアップと建設企業の連携も活発で、ハウスメーカーやゼネコンが自社現場にスタートアップのSaaSを導入する例が増えています。例えば大和ハウスや積水ハウスといった大手がANDPADを採用し全国の協力業者との施工情報共有に活用しています。さらにゼネコン各社はオープンイノベーションにも力を入れ、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を通じて有望スタートアップに出資する動きも見られます。テラドローンは建機大手コマツと資本提携(2019年)し、同社のスマート施工プラットフォームにドローンデータを組み込む協業を展開しています。
ビジネスインパクト
建設DXがもたらす効果としては、現場管理の効率化による生産性向上が顕著です。ANDPAD利用企業では、現場日報や写真整理に費やす時間が大幅短縮され、あるリフォーム会社では月次報告作成時間が従来比50%減少したとの報告があります。またコスト削減の面では、工期短縮による人件費圧縮や過剰発注の防止といった成果が現れています。情報共有の円滑化で手戻り工事が減り、材料ロスも削減されました。安全性向上にも寄与しており、遠隔臨場(リモート立会い)やIoTセンサーによる重機の稼働監視で事故リスクを低減する効果も期待されています。人手不足対策としては、限られた技術者で複数現場を管理できるようになるため人材あたり受注件数を増やすことが可能となり、熟練者不足の緩和に繋がっています。加えて、DXにより施工データが蓄積されることでノウハウの見える化が進み、若手育成にも役立つという波及効果も生まれています。
最新トレンド・支援策
建設業DXの最新トレンドとして、国も後押しするBIM/CIMの全面導入があります。2023年度より公共工事で原則BIM活用が求められるようになり、関連ソフトやコンサル需要が高まっています。またスタートアップ発の施工現場向けスマートグラスや、AIによる建物画像認識で自動出来高検査を行う技術なども注目されています。国土交通省は「インフラDX大賞」を創設し優れた取組を表彰するほか、建設分野の生産性革命に資する技術に補助金を交付しています。地方自治体でも建設テック実証フィールドを提供し、新技術の社会実装を支援するケース(例:福島ロボット試験フィールドでの建機ロボ実験など)があります。さらに政府のスタートアップ育成5か年計画の中でも、建設・不動産テックは重点分野と位置付けられ、規制緩和(例:オンライン完結の役所手続き推進)や資金供給策によって今後もDXが加速していく見通しです。