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2022年〜2024年の世界フィンテック動向:新興国と中国を中心に

はじめに:世界的なフィンテック成長の概観

過去2〜3年(2022年~2024年)、世界のフィンテック産業はパンデミック後の調整局面を迎えつつも、着実に成長を続けました。フィンテック企業の世界売上高は2023年に3,200億ドルを超え、前年比14%増という力強い伸びを示しています。従来の銀行・金融機関に代わる個人向け(B2C)サービスだけでなく、企業や金融機関を支援する法人向け(B2B)ソリューションも発展し、業界全体でデジタルトランスフォーメーションが進みました。

特に中国やインドをはじめ新興国では、モバイル決済やデジタル融資などフィンテックの普及が金融包摂(ファイナンシャル・インクルージョン)の促進役となっています。また、2021年にピークに達したフィンテック投資熱は2022年以降に冷静化し、調整局面を迎えましたが、依然としてコロナ前を上回る資金がフィンテック領域に流入しています。


市場規模と投資額の推移(グローバル・地域別)

グローバルの資金調達と市場規模動向

  • 世界のフィンテック投資額は、2021年の約1,300億ドルから2022年には約920〜990億ドルへと減少、2023年には約512億ドルとさらに半減。
  • 2022年の世界全体の資金調達額は2020年比で+52%であり、依然高水準。
  • 世界フィンテックの売上高は2023年に3,200億ドルを突破、前年比+14%。
  • 2030年には約1.5兆ドル規模になるとの予測も。

地域別:新興国を中心とした動向

  • 米国:2023年も投資額240億ドルで首位だが前年比▲44%。
  • インド:2022年は55億ドル、2023年は25億ドル程度。
  • シンガポール:2022年の投資額は前年比+41%、世界ランク4位に浮上。
  • アフリカ:2022年の資金調達額は18億ドル(前年比▲25%)、取引件数は+25%で善戦。

分野別のフィンテック動向

決済(Payments)

  • インド:リアルタイム決済「UPI」が爆発的に普及、2024年3月時点で月間取扱額247兆ルピー。
  • アフリカ:M-Pesaなどのモバイルマネーが社会インフラ化。
  • 欧米:非接触決済・デジタルウォレットの定着。StripeなどB2B決済基盤の成長。

融資・融資プラットフォーム(Lending)

  • BNPL(Buy Now, Pay Later)企業の評価額が下落。Klarnaは1年で評価額85%減。
  • インドやアフリカでは中小企業・個人向けデジタル融資が拡大、当局が規制整備を進める。
  • 中国:P2Pの淘汰後、銀行との協業による「聯合貸款」へシフト。

保険(Insurtech)

  • 米国・欧州:2022年はInsurtech IPOゼロ。代わりにM&Aが81件と前年比+40%。
  • 新興国:マイクロ保険やオンデマンド保険が広がる。
  • 中国:大手保険会社がInsurtech子会社を設立しデジタル戦略強化。

資産運用・投資(WealthTech)

  • 個人投資家向け:Robinhoodやロボアドバイザーの普及。
  • 新興国:Nubank(ブラジル)が1億ユーザー突破。投資人口の裾野拡大。
  • オープンバンキング:ブラジルなどが先進事例に。

暗号資産・Web3/DeFi

  • 2022年:テラ崩壊、FTX破綻により市場急落。
  • 規制:EUはMiCA規則を導入、米国もSECなどが厳格化。
  • CBDC:中国のデジタル人民元、ナイジェリアのeNairaなど導入進行。
  • 実需:資産トークン化やDeFiの利用が着実に広がる。

注目のフィンテック企業(スタートアップ・ユニコーン)

  • Ant Group(中国):Alipayなど。規制でIPO中止→再編→罰金で改革完了。
  • Stripe(米国):決済API最大手。2023年に評価額500億ドルに調整。
  • Nubank(ブラジル):成人の半数以上が利用、評価額約300億ドル。
  • Klarna(スウェーデン):BNPL。評価額がピークから85%減。
  • Revolut(英国)、Chime(米国)、Flutterwave(ナイジェリア)など多数。

主なM&A・上場など資本市場イベント

  • M&A:BlockがAfterpayを290億ドルで買収。VisaがPismoを10億ドル超で買収。
  • IPO:2021年にNubank、Paytmなど上場。2022年以降はフィンテックIPO激減。
  • 調達:Stripeが2023年に65億ドルをプライベートラウンドで調達。

政策・規制の変化と当局の動き

  • 中国:Ant Group規制などを経て、健全な成長段階へ。フィンテック発展計画を策定。
  • 欧州:MiCA(暗号資産)やPSD3(決済)を整備。
  • 米国:FedNow稼働開始。SEC・CFPBが暗号資産やBNPLを監督強化。
  • インド:UPI・Account Aggregatorなどデジタルインフラを整備。
  • 東南アジア:デジタル銀行免許の付与が進行。
  • アフリカ:オープンバンキング導入(例:ナイジェリア)。

B2BとB2C:法人向け・個人向けフィンテックの両潮流

B2C(個人向け)

  • ネオバンク、BNPL、ロボアドなど。UX重視で急成長。
  • 課題:顧客獲得コストが高く収益化が難しい → リストラ・有料化へ。

B2B(法人向け)

  • API型のBaaS、クラウドバンキング、RegTechなどが台頭。
  • 特徴:金融機関と提携しやすく収益性が高い。
  • エンベデッド・ファイナンスを支える裏方の存在に。

おわりに

  • 世界のフィンテックは2021年の熱狂を経て「持続可能な成長」へとシフト。
  • 新興国の金融包摂、規制整備、B2B/B2Cの共存・融合が今後のカギ。
  • 第二波の成長に向けた地盤固めが進んでいる。